★☆少子化社会の「子ども学」、より良い次世代育成のあり方を求めて☆★
「少子化」がわが国で問題になって久しい。2002年度の合計特殊出生率が1.32になった、1.32ショック以来である。ついに昨年から人口減少社会に突入したことにより、日本の社会基盤は崩れ、国の未来が危ぶまれると言う。ご存知のように、この問題は、多くの人たちによって論じられているが、それを「子ども学」“Child Science”の立場から捉えて、論じようとする人は殆どいないと思う。ここで言う「子ども学」の立場とは、簡単に言えば、学際的さらに環学的に子どもを中心に考える科学を統合し包括した体系である。この機会に、より良い次世代育成の在り方を求めるために、「少子化社会」を「子ども学」の立場から考えてみたい。
「少子化社会」を「子ども学」の立場から考えるとは、「少子化」を直接あるいは間接に論じている人々の依って立つ学問的な基盤を縦横に並べてつなげ、環のようにして、科学の新しいパラダイムを創出して、この問題を従来にない視点から捉えようということである。それは、とりもなおさず、子どもの人間科学“Human Science”の立場から考えることである。子どもは「生物的存在」として生まれ、「社会的存在」として育つ以上、また、「少子化」社会にも「生物的側面」と「社会的側面」の二つがある以上、少なくとも医学・生物学を中心とする自然科学と、社会科学・文化人類学などの人文科学を統合し包括しなければ「子ども学」は成り立たない。さらに、いろいろな立場の人たちが「日本子ども学会」のような話し合いの場をもてば、必ずや新しいパラダイムが、自己組織化され創出されると思われる。
「少子化」は、次世代を育てるべき人々が結婚せず、子どもを生まなくなったことが原因であることは明らかである。結婚し、子どもを生むという人間の営みは、人間の「生物的側面」であり、結婚生活を営み、子どもを育てるということには「社会的側面」が深く関係する。この「生物的側面」には、人類進化の中で得られた人間の脳の中にあるプログラムと関係すると考えられ、それは生活の場からの情報で働くものである。情報には「理性の情報」(logical information)と「感性の情報」(sensitive information)があるが、「生物的側面」には、後者の影響が強いことも明らかである。政府が、単に保育施設や児童手当のようなものを充実させても、「少子化」に歯止めがかからないのは、優しさで代表されるポジティブな感性の情報が、現在の社会で希薄になってしまっていることが原因のように思われる。「少子化」問題は、子どもの虐待をはじめ、育児・保育・教育の問題で関係者が共通の基盤を有し、次世代育成を考えていく必要があると思われる。
「少子化」は、人間生態的な現象であり、豊かな社会で起こることは、他の先進国、さらには急速に先進化する国に見られることからも言えよう。このような社会は、情報が過多になり、生活が繁忙を極め、人間関係が希薄になるため、人間の「生物的側面」を構成する脳のプログラムが円滑に作動しないのではなかろうか。したがって、全ての出発点は、優しい社会を取り戻すことにある。
「少子化」の要因を探り、その対策を立てるには、「子ども学」が重要なことは明らかであり、それをもとに、次世代育成のため、ペアレンティング(親業)をはじめ、育児・保育・教育のより良いあり方を求めることにも、当然のことながら「子ども学」が重要なのである。ベネッセコーポレーションの中に、この度「ベネッセ次世代育成研究所」が設立されたが、上述の立場から、CRNがこの10年間求めて来た「子ども学」を柱として、その中心に据えたい。
<出典元URL>
http://www.crn.or.jp/OFFICE/MESSAGE/BACKNO.HTM
*今月の所長メッセージ(2006年2月3日掲載より)
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