★☆「笑いの治癒力」から「生命感動学」へ☆★
笑うことが人を元気付けることは、皆さんも体験済みのことで、どなたも理解出来よう。しかし、最近まで病気を治す力があることは、医学者もあまり考えていなかった。
それに火を付けたのは、すでに亡くなられたアメリカのジャーナリスト、ノーマン・カズンズ氏である。もう20年以上前の事と思うが、1970年末、招かれたロシアの旅から帰って間もなく、氏は急性リュウマチを発病した。知人が院長のニューヨークの大病院に入院、治療を受けたが、全く満足出来るサービスではなかった。検査のために1日に何回も採血され、病院の食事はまずく、苦痛の毎日だったと言う。
氏は、隣のホテルに移り、医師に往診させ、検査もまとめてしてもらい、美味しい食事を摂り、ゲラゲラ笑えるビデオを見ながら、ビタミンCの大量投与を行った。その結果、良くなったというのである。
その体験を氏は、「病気の解剖学」と題して、西洋医学の限界、人間的な医療、さらには伝統医学などが果す役割、笑いを含めた心の持ち方と治癒力の関係などを、アメリカの一流医学誌で論じたのである。その結果、医療の人間化、東洋医学・伝統医学などと西洋医学を組み合わす運動がアメリカで始まり、政府は従来にない大きな研究費まで出すようになった。そのような医療の新しい在り方を、代替医療・補完医療と呼んで、西洋医学が従来相手にしなかった医療も組み合わせることが一般化したのである。
この医療の人間化の流れの中で、笑いとか優しさなどの「陽」の心の状態と治癒力の関係について、多くの研究が行われた。その結果、患者さんの免疫力が高まり、血糖や血圧の上昇を抑えるなど、いろいろなことが分かってきたのである。日本リュウマチ学会では、落語家を特別講演で呼んで、医師と患者が一緒になって笑うというような行事まで行うようになったのである。最近では、「笑い学会」まで出来そうである。
笑いは、「情動」に関係するので、広く考えれば、大脳中心部にある「大脳辺縁系」の活動を高めるといえる。子どもの病気、例えば感染症でも、優しくケアすれば、治療効果、特に免疫力は高まり、早く良くなることは知られている。「情動」の中で、体にとって良いものを「感動」と呼ぶことが出来るので、「生命感動学」“Bio-Emotinemics” という新しい体系を考える必要があるように思う。
子どもも大人も、笑いや優しさによって、「生きる喜び一杯」“Joie de vivre” になれば、心と体のプログラムはフル回転して、健康になり、子どもは良く育つのである。特に、子どもが良く育つには、「遊ぶ喜び一杯」「学ぶ喜び一杯」を体験させて、「生きる喜び一杯」になるよう、育児・保育・教育の在り方も、「生命感動学」の立場から、今捉え直すべき時にある。
(参考:ノーマン・カズンズ(著)「笑いと治癒力」岩波現代文庫)
<出典元URL>
http://www.crn.or.jp/OFFICE/MESSAGE/BACKNO.HTM
*今月の所長メッセージ(2004年7月30日掲載より)
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