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2006年8月25日 (金)

★☆「笑いの治癒力」から「生命感動学」へ☆★

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笑うことが人を元気付けることは、皆さんも体験済みのことで、どなたも理解出来よう。しかし、最近まで病気を治す力があることは、医学者もあまり考えていなかった。

それに火を付けたのは、すでに亡くなられたアメリカのジャーナリスト、ノーマン・カズンズ氏である。もう20年以上前の事と思うが、1970年末、招かれたロシアの旅から帰って間もなく、氏は急性リュウマチを発病した。知人が院長のニューヨークの大病院に入院、治療を受けたが、全く満足出来るサービスではなかった。検査のために1日に何回も採血され、病院の食事はまずく、苦痛の毎日だったと言う。

氏は、隣のホテルに移り、医師に往診させ、検査もまとめてしてもらい、美味しい食事を摂り、ゲラゲラ笑えるビデオを見ながら、ビタミンCの大量投与を行った。その結果、良くなったというのである。

その体験を氏は、「病気の解剖学」と題して、西洋医学の限界、人間的な医療、さらには伝統医学などが果す役割、笑いを含めた心の持ち方と治癒力の関係などを、アメリカの一流医学誌で論じたのである。その結果、医療の人間化、東洋医学・伝統医学などと西洋医学を組み合わす運動がアメリカで始まり、政府は従来にない大きな研究費まで出すようになった。そのような医療の新しい在り方を、代替医療・補完医療と呼んで、西洋医学が従来相手にしなかった医療も組み合わせることが一般化したのである。

この医療の人間化の流れの中で、笑いとか優しさなどの「陽」の心の状態と治癒力の関係について、多くの研究が行われた。その結果、患者さんの免疫力が高まり、血糖や血圧の上昇を抑えるなど、いろいろなことが分かってきたのである。日本リュウマチ学会では、落語家を特別講演で呼んで、医師と患者が一緒になって笑うというような行事まで行うようになったのである。最近では、「笑い学会」まで出来そうである。

笑いは、「情動」に関係するので、広く考えれば、大脳中心部にある「大脳辺縁系」の活動を高めるといえる。子どもの病気、例えば感染症でも、優しくケアすれば、治療効果、特に免疫力は高まり、早く良くなることは知られている。「情動」の中で、体にとって良いものを「感動」と呼ぶことが出来るので、「生命感動学」“Bio-Emotinemics” という新しい体系を考える必要があるように思う。

子どもも大人も、笑いや優しさによって、「生きる喜び一杯」“Joie de vivre” になれば、心と体のプログラムはフル回転して、健康になり、子どもは良く育つのである。特に、子どもが良く育つには、「遊ぶ喜び一杯」「学ぶ喜び一杯」を体験させて、「生きる喜び一杯」になるよう、育児・保育・教育の在り方も、「生命感動学」の立場から、今捉え直すべき時にある。

(参考:ノーマン・カズンズ(著)「笑いと治癒力」岩波現代文庫)

<出典元URL>

http://www.crn.or.jp/OFFICE/MESSAGE/BACKNO.HTM

*今月の所長メッセージ(2004年7月30日掲載より)

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2006年8月10日 (木)

★☆脳進化の歴史から考える子ども☆★

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子どもの心も体も、すくすく健康に育てるには、日々「あそぶ喜び一杯」、そして学校に入れば「学ぶ喜び一杯」にもして、「生きる喜び一杯」“joie de vivre”を、折々体験させる必要がある事は、どなたでも否定されないでしょう。

何故それが必要であるかを考えるには、脳進化の歴史を考えると良いと思うのです。脳は、脊椎動物に進化して、それまでの軟体動物の体内に散在していた神経をまとめて出来たと考えられています。ですから、はじめて出来た脳は、われわれの脳の脳幹・脊髄がそれに当り、「生きている」為だけのプログラムを持った脳なのです。呼吸とか循環とか生きるに必要な生理機能をコントロールする脳です。

その脳を持った動物が、集団生活を始め、生存競争をしながら子孫を増やす為に、本能とか情動などを使って、「たくましく生きて行く」為の辺縁皮質が、脳幹をカバーして、原始的な哺乳動物の脳が出来たのです。
さらに進化が進むと、生活環境に適応し、社会生活する「うまく生きる」と共に、文化を創造しながら「よく生きる」事が出来る様に、知・情・意のプログラムを持った新皮質が辺縁皮質をカバーして、霊長類の脳が出来ました。この新皮質、特に前頭葉が発達して、現在の人間の脳が出来たのです。

われわれの脳にある「新皮質」と「辺縁皮質」と「脳幹」とは、お互いに相互作用しながら、脳を働かせて生活していると言えます。当然の事ながら、子どもの脳の成長、心の発達も、その相互作用に支配されています。

「あそぶ喜び一杯」「学ぶ喜び一杯」になる時は、大脳新皮質と辺縁皮質の相互作用が、特に活性化された状態と言えます。「あそぶ喜び一杯」では運動野、「学ぶ喜び一杯」では前頭葉が深く関係していると考えられます。「ドキドキ・ワクワク」が特に強くする場合は、当然、脳幹も強く活性化しているので、これを“joie de vivre” 「生命感動」の状態と言えます。

われわれは、この「生命感動」の機会を、子ども達がなるべく多く持てるようにするにはどうしたら良いかを考えなければなりません。

子ども達の生活の場のデザイン、「あそび」や「学び」のやり方の工夫など、いろいろ考えられます。それにはまず「生命感動」“joie de vivre”のメカニズムを、脳科学の立場から明らかにする必要があります。私は、その学術体系を「子ども生命感動学」“Child Bio-Emotinemics”と呼び、子ども学の柱として、その体系付けを進めて行きたいと考えています。

<出典元URL>

http://www.crn.or.jp/OFFICE/MESSAGE/BACKNO.HTM

*今月の所長メッセージ(2004年3月5日掲載より)

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2006年8月 3日 (木)

★☆皆で子ども達の事を考えよう☆★

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2003年11月18日、19日早朝4時からNHKラジオ(第2)、ラジオ深夜便で「命を育み、心を育てる」と題して、三宅アナウンサーと私の対談が、2日にわたって放送されました。その反響は大きく、驚くと共に感激しました。

来年3月、大学を卒業して、ちょうど50年になります。半世紀にわたる小児科医としての体験と実感にもとづく私の思いが、皆さんの共感を呼んだに違いありません。親戚や知人、そして何も知らない方からも、電話・FAX・Emailとお言葉をたくさん戴きました。その中の1件をご紹介したいと思います。

「なにげなく聞いていたラジオ深夜便で、母と子の相互作用と言うところに、思わず『共感』して飛び起きています。申し遅れましたが、私は保育者です。何十年も保育の世界にいてまさしくこれに『つきる』という思いがあります。人間の子育てにとって大切なことは『優しい育児&保育』という科学的なプログラムに興味津々です。」

皆さん子ども達の事を心配しているのです。

今の子ども達の姿を見ると、世の中にガタが来ているように思えます。それを取り戻し、子ども達の心と体を健やかに育てるのは、私達大人の責任です。それを果たすには、まず子どもに関心をもつ学者・研究者が一同に会して話し合う事が必要です。そのために、ラジオでもお話した様に、2003年11月29日に「日本子ども学会」を設立する事にしたのです。

<出典元URL>

http://www.crn.or.jp/OFFICE/MESSAGE/BACKNO.HTM

*今月の所長メッセージ(2003年11月28日掲載より)

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